古典園芸  桜草 その 3 育て方

さくらそう(日本桜草・プリムラシーボリティ)の育て方

植替え時期・実践的手法

 桜草の栽培指導書では植替え時期はみな1,2月になっています。これはそのとおりですが、それにはちょっとしたわけがあります。それは苗の成熟期だからというだけでなく、桜草は5号鉢に4芽植え、花茎の高さをそろえ同時に咲かせるのが最も美しいとする江戸からの伝統的な美学を踏まえているからです。

 まだ寒くない10月11月に植え替えても差し支えないのですが、同じ高さに同じ大きさの花を4ツそろえて咲かせるには、同じボリュウムの苗を4ツ揃えるのが手っ取り早い方法なのです。それには発芽寸前の1,2月が揃えやすいのです。

 10月11月頃の苗は、もうひげ根を十分伸ばしかなり成熟しているように見えます、しかし同じように見えても開花期までの3~4ヵ月で各々が個性を出して草姿をつくります。 そのため用意した四本のうち一本だけがひ弱な花径だったり逆に大きすぎたりします。その不ぞろいをただすには発芽直前の同じボリュウムの苗をそろえる方が楽なわけです。

展示会場に集結したさくらそう。

しかし現在では4芽揃える手法より、多少不揃いでも鉢全体の株が元気で豪華に咲けばよいとする栽培家が増えました。それで植替え時期も変化しているようです。それに巨大輪好みの人が増えました。小さい花は5~6芽寄せて植えています。

 確かに伝統の美学によって完成した作品が展示会などで数百並ぶと醸し出される豪華さは見事です。またその形式を創り上げた時代の桜草愛好家は、現在と違い下向きの花を好みました。当時から伝わる名花、たとえば紫雲竜、帛捌(ふくささばき)、大内飾、西王母、酒宴の床(うたげのとこ)など江戸末期に作出されたものは皆うつむき加減です。特に西王母などは咲き誇っている時期でさえ萎れてしまうのかナと思わせる静かさがあります。

 それで天女(中村長次郎氏作出、1980年代)が発表されるとその華やかさと上向きの花形に「これは桜草じゃないプリムラだ」などと言われたものです. 一江豊一氏作出の八重咲も同じ視線でみられました。曰く「同じ花段に飾ると周りの花に落ち着きがなくなる」などです。

 しかしどうでしょうか多数の支持者もいる現時点では、疎外するわけにはいかないでしょう。 同じ葉をもち同じ姿の草花なのですから。以上のような事情から植替え時期を考慮してはどうでしょうか。桜草はなかなか狙った植替え時期にたくさんの苗を手にすることはできません。3号ポットに入っていたり、小さい芽だったりします。

 そこで植替え時期は、手に入れた状態で考えるべきです。極端に言えば、花の咲いているときを除けばいつでも植替えOKです。植替え作業が年に一度なら時期外れでも後の管理をキチンとすれば大丈夫です。肝要なのは水やりです。使用した用土と相談しましょう。

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