古典園芸 桜草 その1 自生地考察

日本桜草(プリムラシーボリティ)ご存じ? 自生地はどこ?

 ご存じ?そう聞かれれば、誰でも桜に似た花の咲く草花を思い浮かべて知っていると答えてしまいます。しかしその桜草が江戸時代から伝わる古典園芸植物の桜草だというとほとんどの人が首をかしげてしまいます。

 横浜鶴見川周囲に伝わる野生種「小机」

 現在の園芸店で普通に売られている桜草はいわゆる西洋桜草「プリムラ」と称する外国種のものです。イギリスなどでよく栽培されているそうです。

日本古来の桜草は、以前は「日本桜草」と呼ばれていました。しかしその自生地がけっして日本だけでなく朝鮮半島から中国各地、シベリア方面まで広範に及んでいることから「日本」を外しただ単に桜草(サクラソウ)とだけ呼称するようになりました。

 そして「サクラソウ」とカタカナ表記の時は野生種を指し「さくらそう」とひらがなの時は人の手によって作られた園芸種のことを言うようになりました。

 なお学名の「プリムラシーボリティ」は幕末に来日したドイツ人医師、博学者シーボルトが日本のサクラソウをヨーロッパに紹介したしたので、彼の名を冠して「プリムラシーボリティ」つまりシーボルトの桜草となったわけです。

 また自生地は日本各地にあります。多くは河川敷と火山周辺の草原に見られます。火山周辺に多いのは、爆発によって形成された地が攪乱を繰り返しながらも長期にわたり湿地と草原を保っていたからとおもわれます。そうした条件下にまだ陸続きだった大陸から渡ってきたサクラソウが住み着いたのでしょうか。

 河原の自生地は埼玉県の田島ヶ原がとくに有名ですが、ここを国の天然記念物にすべく奔走した三好学氏の指摘通り、上流から流れ着いた種や根が定着して住み着いた「二次的自生地と 考えられます。

各地のサクラソウ自生地

 有珠山、樽前山などのある北海道日高地方、浅間山の軽井沢、熊本の阿蘇周辺が国内三大自生地です。皆火山のあるところです。火山のない四国に自生地がないのは偶然ではないようです。

 北海道日高地方、三大自生地の一つ。苫小牧方面から襟裳岬にかけての海岸線が広範な自生地だったようです。だいぶ減少してしまいました。

 青森県種差海岸 海岸にある珍しい自生地。八戸市の東海岸にあり650種を超える植物が自生している海岸。東日本大震災の津波による被害に苦しめられたが青森県立名久井農業高校の保全活動に救われた。nakui11th.pdf (kk-tohoku.or.jp)

 岩手県小岩井農場 日本最大の民間総合農場です。東京に本社を置く小岩井農牧(株)が経営。岩手山の噴火堆積の多い地区にありサクラソウが点在している。リクリエーション設備もあります。

 茨城県大子町比較的小規模ながら大子町の天然記念物として手厚く保護されています。

 群馬県桐生市 新里町赤城山 ふれあい公園などいくつかの自生地があります。新里文化財保護協会や地元の勢多農林高校植物バイオ研究部などが保全活動にあたっています。

 長野県軽井沢 国内三大自生地の一つ。サクラソウが軽井沢町の町花になっています。かっては大規模な自生地がありましたが、ゴルフ場をはじめとするリゾート開発が進み大幅に後退してしまいました。軽井沢植物園、軽井沢サクラソウ会議が保全活動をしています。 https://sakuraso.org/index.html 

 長野県八ヶ岳周辺  野辺山、清里  松本市中山地区、内田地区

 鳥取県日野郡 神戸福栄 近年再発見され「福栄サクラソウを守る会」が懸命にガードしています。昔日野川沿いに群落がありました。

 広島県山県郡芸北町 美和地区、熊城山北嶺、NPO法人西中国山地自然史研究会が保全活動をしています。

 大分県由布岳、猪の瀬戸湿原  登山道に沿うように咲くサクラソウが見られます。同県には他に個性的な野生種(朝鮮系)で知られる久住山 があります。

 熊本県阿蘇 三大自生地の一つ。広範囲に自生している。阿蘇市波野地区で保全活動に邁進する岩下平助氏93歳(元波野村議会議員)が話題になっています。                                                

  自生地ではいまだに盗掘にあっていますが、「桜草」を盗んでも金にはなりません絶滅危惧植物だと言っても数百もある銘柄を対象にコレクトしている愛好家にとっては盗んできた自生種など何の価値もありません

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